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No.1627 2011-08-31
■だいたい8月も終わりになるとラジオからは井上陽水と玉置浩二の「夏の終わりのハーモニー」とか、最近の曲だと森山直太郎のあれとかがかかるのだと思う。
山下達郎だったら「さよなら夏の日」か。シュガーベイブ時代の「夏の終わりに」という曲もとてもいい。それはそれとして、
8月が終わるからといって夏が終わるという感覚は、個人的にはぜんぜんなくて、それというのも、本州の場合、子供らの夏休みといえば8月末ということなので、
ここが一つの区切りとなるのだと思うが、北海道で育つと夏休みは8月の真ん中くらいで終わりなので、ちょっと感覚がちがう。
そして、本州の場合、ことによるとここからが暑さ本番ということもありえるのだった。とにかく夏が長くてつらい。本州で通算13年くらい生活してみて、
自分の中での四季が、かなりずれた。5月の連休から10月の体育の日くらいまでが夏だと思う。それでも今年はたまに涼しい日が数日続くことがあったりして、
去年よりはいくらかましかもしれぬ。
■秋になると毎年、よくあの暑い夏を生き延びたなと、大げさでなく本当にそう思う。生きていれば美瑛の美しい風景を見たり石狩で音楽を楽しんだりできるので、
つらいけどがんばるしかない。
No.1626 2011-08-16
■6月にも函館に来たばかりなので、町の中をぶらぶらして写真を撮ったり、という気持ちにはあんまりならなかった。
なので実家でだらだらごろごろ過ごしていた。実家の庭で育てている野菜を見たり、高校野球を見たり、近くのショッピングセンターの本屋に行ったりもした。
日が暮れてきてめっきり涼しい。盆が過ぎれば北海道はもう秋で、とんぼも飛んでいる。函館の空気は心地よくて体に合う。
空港行きのバスはめずらしくけっこう乗客が多い。夜の便で羽田へ。東京はお湯みたいな空気で気持ちが悪い。リムジンバスで津田沼まで。
No.1625 2011-08-15
■となり町の親戚の家までお土産を持っていったり母親と買い物に行ったりしていた。夜は実家に兄の家族も来て食事。
それから地元の友人と本町にある店で少しばかり飲酒などをして話をした。函館に帰省しても本町のほうにはあまり足を運ばないが、
このあたりは大門方面にくらべて夜の街はにぎわっているようだ。客の年齢層がやや高めで、繁盛してるわりには落ち着いててよかった。
地元の友人とは震災後初めて会うので、やはり話題はあのときの話。
No.1624 2011-08-14
■地下鉄麻生駅から始発で札幌駅へ。コインロッカーの荷物を出してみどりの窓口で帰りの切符を買い、簡単な朝食も買ってスーパー北斗に乗車。
盆休みがまだ関係しているのか、函館行きの特急は例年よりも混んでいた。寝たり起きたりを繰り返しているうちに3時間。函館駅のひとつ手前、
五稜郭駅で下車し歩いて実家へ。実家に住んでた頃使っていたCDラジカセでサンデーソングブックを聞いて、昼間寝て、
起きたら食事。ネットで今年のRSRの感想などを読んで、また眠った。
No.1623 2011-08-13
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2011 in EZO 2日目。
■泊まったホテルのチェックアウト時間は通常11時だったのだが、前の晩のうちにフロントに言って13時にしてもらったので昼近くまで寝てようと思ってたら、
11時近くに札幌在住の友人から電話があって起きて、少し話してからごそごそ起き上がってぼんやりしたまま支度した。
ホテルを出た時間にはもうRISING SUN ROCK FESTIVAL in EZOの二日目のライブが既に始まっていたが、のんびりと会場へ向かうことにした。
大通駅から地下鉄に乗って終点の麻生。ダイエーの地下にある中華屋で昼ごはんを食べてからシャトルバス。二日続けて晴天に恵まれてありがたい。
また友人達のテントに荷物を置かせてもらい、さっそくなにかライブを見に行くことにした。
■15:30 Pianojac at GREEN OASIS
これは音楽なのだろうか。
音楽には違いないのだろうが、なにかちょっと違うんではないか。ピアノとカホンという楽器でクラシックなどの楽曲を派手に演奏する。
印象としては、パフォーマンスとか曲芸とか、そういった種類のものに近い。そして飽きる。
近くにいたあんちゃんが「イベントで3曲くらいだけみるなら楽しいんだろうけどな」と言ってるのが聞こえたがまさにそんな感じ。
前に出たときえらく評判がよかったので興味を持ったが、やっぱりなんでも自分で確かめてみないとわからないものだと思ったライブだった。
■16:50 東京スカパラダイスオーケストラ GUEST:上原ひろみ at SUN STAGE
早く上原を出せよと思い続けてるうちに持ち時間も終盤になってしまった。
なんだよ上原ちょっとしか出ないのかよ、それ先に言えよ、普通のスカパラはもうええから、
早く、早くひろみをだすんや!となぜか関西人のような口調になるのもしかたないことだ。まあ、それでもやっぱりスカパラはいつもすげえなと思う。
そしてようやく上原ひろみがステージ上へ。
上原がピアノを弾き始めた瞬間、スカパラがバックバンドとなってしまう。それほどまでの存在感。上原がとても楽しそうに演奏してたのが何よりよかった。
上原のピアノと沖のキーボードによる、鍵盤どうしのインプロビゼーションの応酬がすごかった。ロックにしろジャズにしろ、即興は時に聞いてるほうが退屈になることがあるが、
この二人は最高に楽しそうで、他のメンバー達もすごく楽しそうにそれを見ていて、それがよかった。沖氏はけっこう必死に食らいついていく感じだったが、それもよかった。
上原はわざわざこのライブのために帰国したそうだ。そして彼女がステージ上でマイクを通して発した言葉は「こんにちは!」だけだった。
それはそれとして、バリトンサックスの谷中が「戦うように楽しめ」とかわけのわからないことを言う。こういうことを言われるととても醒める。
よくブログとかで「今年夏フェス初参戦です!!」とか書いてる人がいる。一体何と戦うのかな、かわいそうにばかなんだなとしか思えないが、
自分も以前はそんなことを書いたことがあるような気もするからはつかしい。あと「2列目で見た!」 とかも。だからなんなんだという気持ちになります。
■RED STAR FIELDでのThe Birthdayを遠くに聞きながら適当に晩ごはん。札幌に住んでた頃の友人が二日目から来ていたので、合流。
彼は若い友人も連れてきており、その人が10FEETとか好きだというんで、昼間にやったガチャガチャで出た10FEETのバッジをあげたらとても喜んでもらえてよかった。
今年は飲食店もそれほど混雑しておらず、やはり去年と比べてもずいぶん人が減っていると感じる。
その後彼らはBIG MAMAというバンドのライブを見るのにEARTH TENTまで行くというんで、誘われたがあそこまで歩くのがめんどうでやめた。
MOON CIRCUSそばの友人達のテントに戻ったら誰もいなかったので、テントの前でイスに座ってぼうぜんとすごす。
MOON CIRCUSからはgroup_inouという人たちのライブが、GREEN OASISからは子供ばんどのライブが聞こえてくる。
SUN STAGEでのクロマニヨンズのライブが終わって戻ってきた友人達とテントの前でのんびり過ごしていたら、花火が打ちあがった。
例年よりも長い時間、打ち上げが続いていた。大きく美しかった。ここのところ、花火といえばこの石狩の会場で上がるのしか見ていない。
みな何も言わず、ただ夜空を眺めていた。花火が終わると拍手が起きた。
■21:00 向井秀徳+七尾旅人 at BOHEMIAN GARDEN
パッケージ音楽が徐々に衰退し、音楽産業に金が流れなくなりつつある昨今だが、音楽がなくなることはないので
向井秀徳や七尾旅人、今回の他の出演者でいうと斉藤和義、曽我部恵一みたいな独立性の高い表現者たちはずっと生き残っていくのだろう。
いろいろなところで語られていることだろうが、音楽というものを何度も再生機器で聞く権利を金で買うという時代はいつか終わり、
最終的には「実演」だけが金になるものとして残るのだと思う。そんなことを考えたライブでもあった。
今日は打ち合わせしてなくて、昨日電話でちょっと、明日どうしようか、くらいしか話をしてなくて、とライブの最初に言っていたとおり、
前半はわりとぐだぐだで、向井か七尾のファンじゃないと楽しめないような、ひどくだらだらしたライブだった。自分はわりと向井のファンだから楽しめてよかった。
音合わせが終わり、ライブ開始というタイミングで、前のほうにいた客が立ち上がったら七尾が「いいよいいよ、座って聞いて」みたいなことを言って、
みなのんびり座って聞いた。基本的に、向井と七尾が交互に弾き語り。七尾の順番のとき、たまに向井がわけのわからない合いの手を入れたりしておかしい。
向井は酒の一升瓶を置いて、ときどき手酌で飲んでいた。そしてサンプラーを使って一人多重演奏もやってみせたり、
ナンバーガール時代の曲「TATOOあり」なんかもやった。七尾旅人が歌った「コードをひとつ覚えたら」という曲はよかった。
途中、なんという曲かわからないが「レイハラカミさんに捧げます」と一曲歌った。あと、「Rollin' Rollin'」という曲もとてもよかった。なぜか一時間半もやっていた。
■ライブが終わってからテントに戻る途中、ここのところ毎年あるキャンドルジュンのエリアへぶらっと立ち寄ってみた。
びっくりした。いままでここにこんなに人がいたのを見たことがない、というくらいの盛況ぶり。
去年まではあそこの藁の上でみんな深夜ごろごろ横になってたのに、もうそんなことはできないくらい人がわさわさ歩いていた。
一気に知名度があがったものである。去年この会場で広末目撃談があって、そのすぐ後くらいに結婚のニュースがあったから、
ああなるほど、と思ったものである。そしてまたびっくりしたのは、キャンドルジュンがいたのだ。本人登場というやつである。
なにかみんなの前でありがたいキャンドル演説をしてた。平和がどうとかそういった内容だった気がするが、正直彼にはほとんど興味ないので覚えてない。
あんまりしゃべりは上手ではなかったが、逆にそれがうさんくさくない印象。人柄は悪くないのかな、と思った。モンゴル800のなんとかというメンバーもそこにいた。
ろうそくはきれいだった。
■毎年MOON CIRCUSで夜から朝にかけてやってた石野卓球達による「LOOPA NIGHT」という四つ打ちDJ達の枠が今年から「TONE PARK」という名前に変わった。
よくわからないので内容的になにか変わったのかは知らないが、毎年この枠に出ていたKAGAMIというDJが昨年亡くなったこともあり、メンバーも変わったようだ。
最初はTAKAAKI ITOHという人がなんかかけてた。人はあまり多くないがみな好きなようにふらふら踊っている。
映像はDEVICEGIRLSという人達によるものだそうで、後ろの大きなスクリーンにいろいろ映っている。
このあと、シンニシムラから石野卓球、ケンイシイと続く面子がすげえ豪華だというのはDJ関係に詳しくない自分にもわかる。
■23:30 Dachambo at BOHEMIAN GARDEN
いきなりすごい。楽しい。BOHEMIAN GARDENでライブなのでだいたいみんな最初座ってたが、思わず立ち上がりたくなる。
よく彼らの紹介で「サイケデリックな」「ジャムバンド」「民族音楽とトランス」とか書かれていて、一見とっつきにくい感じがするが、ぜんぜんそんなことはなく、
わかりやすくて明るく楽しい。もともとアボリジニーかなにかの楽器だったディジュリドゥとギターの奏でるメロディがツインドラムの重い音に乗っかって、厚みのあるダンサブルな音楽になる。
ディジュリドゥというやつは木でできてるわりには、トランペットとかトロンボーンとか、ああいう種類の楽器の音にどこか似ていて、バンドサウンドとの相性がとてもいい。
もうちょっと長く見ていたかったので名残惜しいが、数曲聞いてから移動。
■24:10 モーモールルギャバン at GREEN OASIS
以前、iTunes Storeで無料配信されていた一曲を聞いてみたとき、正直なんだかよくわからないがバンド名もなんか変だし曲もふざけてるみたいな印象だったので、
それ以来他の曲を聞いてみようと思うこともなかったが、なんとうなく気になるのでライブを見てみることにした。驚いたのは深夜のGREEN OASISが人でいっぱいだったことで、
おお期待がでかい、とか思ってたらちょうどメンバーがステージ上へ。なぜかいきなりドラムの男がパンツ一丁だ。そしてテンションが高い。まだ若いと思われる3ピースバンドで、
パンツ一丁がボーカル+ドラム、キーボードが女で、たまにボーカルもやるし、銅鑼も叩く。もう一人はベースの男。なんだかちょっと変わった編成だが、
へんな編成のバンドは好物なので、いい。パンツ一丁は左手にちょっと包帯を巻いていた。自転車で怪我したそうだ。ドラムなのに大丈夫かと思って見ていたが、
どうにか大丈夫そうだ。
おそらく、このRSR以外のフェスティバルやイベントでもそうだと思うが、つまらないとすぐにステージ前から客が去るのがフェスのシビアなところで、
そういう場面も少なからず目にしてきた。そこは客の自由だし、出演する側も覚悟の上とは思うが、やはりそういう光景を見ていると若干、
演奏してる者達が気の毒になる。絶対ステージ上からでも見えてると思う。
だれもこのステージから離れようとしないのだ。
激しくパンクで歌詞も奇をてらってる感じがあるが、よく聞いてるとメロディが美しいのだ。そして変な歌詞とは反対に、曲にはスケールの大きささえ感じる。
そして強いオリジナリティがあって決して飽きさせない。次はどんな曲なんだろうとわくわくする。まだ荒削りな部分もあるが、逆にそこに伸びしろの大きさが見える。
「俺達はJPOP」と、たびたびドラムの者が言っていたが、その言葉は皮肉にも聞こえる。「ライジング〜!」と言うと客が「サ〜ン!」と応える。
そしてパンツはドラムセットに上り、バランスを崩して落ちて笑いを誘ったが、ライブ後、歩けなくなって病院に搬送されたらしい。検査の結果、
「陰部打撲及び血腫」と診断されて入院したそうだ。
■昨日の神聖かまってちゃん、Predawn、このモーモールルギャバン、見なかったがサカナクションやOKAMOTO'S、踊ってばかりの国、the telephones、
昨年出た相対性理論、DE DE MOUSE、andymoriなどなど、強い個性を持った若いバンドやミュージュシャン達の才能に、
日本のポピュラーミュージックの明るすぎる未来が見えた気がした。しかも今の若い人達はいろんな音や映像、情報に簡単に触れられるせいなのだろうが、
うまくて当たり前、というところからスタートしている。うまいだけじゃだめだからその一歩も二歩も先を見ているように感じる。だからなおさら頼もしい。
■テントに戻るとちょうどMOON CIRCUSで石野卓球。オープニングが山下達郎の「希望という名の光」のアカペラバージョンを静かなバックトラックにのせたもので、
しゃれているし、とても美しかった。最後にもこれをかけたらしい。これは石野氏なりの今の世の中へのメッセージだったのかもしれぬ。しばらくぼうぜんと座って過ごしたが、
だらだら朝まで過ごしてしまった去年の反省を活かし、深夜の遅い時間のライブにも足を運ぶことにした。
■26:20 曽我部恵一 at SUN STAGE
彼に「白い恋人」という曲がある。
「僕らはきっと日曜日の朝に めまいがするような朝日を見る」
曲名といい歌詞といい、このRSRにぴったりの曲だなと思った。もうすぐ、日曜日の朝日が昇る。朝が来てほしいような、
来てほしくないような、そんな時間帯。曽我部恵一はいちばん大きなステージで、ギター一本で弾き語りのライブ。
さすがにこの時間なので、そこらでばたばたと横たわっている者達が多数出てきている。しかも曽我部の気持ちのいい歌声で眠りについてしまいそうになるのはよくわかる。
曽我部恵一の歌を聞きながら寝入る。なんともぜいたくなことである。自分はどうにか眠気をこらえ、眠さのピークは越せたようで、最後まで聞くことができた。
「テレフォン・ラブ」もやった。「青春狂走曲」もやった。「満員電車は走る」という曲は初めて聞いたが、切ないような、悲しいような、そんな曲だった。
ジョン・レノンの「Imagine」を、全歌詞日本語に訳して歌った。そして「白い恋人」。
■27:30 SCOOBIE DO at EARTH TENT
これまで何度もこのRSRに出演している彼らだが、ちゃんとライブを見るのは初めてかもしれぬ。「3年連続6度目。甲子園みたいだな」とボーカルのコヤマが言っていた。
彼らのライブの評判はあちこちで見聞きしていたし、彼らの楽曲はいいものがたくさんあるのも知っていたが、他に見たいライブと重なっていたり、
深夜のしんどい時間だったりしたので、いままで見逃していた。今回はようやくいろんな条件を乗り越えて今年最初で最後のEARTH TENTまでやってきたのだった。
こんな時間に大勢の者が集結している。「売れてるやつも、そうでないやつも、メジャーもインディーも関係なく、格好いいと思った連中を呼び集めてるのがこのフェスのいいところ」とコヤマは言う。
確かに以前はそうだったかもしれない。いまでもそういう部分はまだあるかもしれない。でもいまは、このフェスのブッキングにもいろんなしがらみが見え隠れしていて、
その部分についてはあんまりいい感情を持てない。それはそれとして、ライブバンドとしての彼らの実力は本当にすごいものがある。
こんな深夜というかもう早朝だが、この時間帯なのに横ノリ、縦ノリで多くの客を躍らせる彼らのパフォーマンスは素晴らしい。
まさに「真夜中のダンスホール」。知名度やセールス的には納得できない人も多くあろうと思うが、
そろそろ彼らもSUN STAGEでいいのではないか。そう思わせるだけあるいいバンドだ。「ラストナンバー」も「最終列車」もよかった。
終盤、MCなしで立て続けにやった「get up」「Back on」「Little Sweet Lover」もとてもよかった。アンコールもあった。EARTH TENTを出ると、既に夜が明けていた。
■28:40 ハナレグミ at SUN STAGE
一度テントまで荷物を取りに戻るために歩いていると遠くから「音タイム」。こんなに朝の空気に合う大トリはことによると初めてかもしれぬ。
「あいのわ」「大安」あたりまでは聞こえた。テントに戻り、友人に連絡して会場を後にする。歩いてまたSUN STAGE方面まで行くと「光と影」。
SUN STAGEの横の小さな斜面で友人が横になっていたのを見つけて、言葉を交わして別れ、もうすぐ入場ゲートが見えてくるあたりで「明日天気になれ」。
最後にいい曲が聞けたなと思いながらシャトルバス乗り場へ。これで今年のRSRも終了。空はうすい雲に覆われてRISING SUNとはならなかったが、
最後までほとんど雨も降らずに天気に恵まれた2011年だった。
■後日公式に発表になった入場者数は約47000人。ここ最近の中ではダントツに少ない。昨年と比べても2割以上の減少で、この10年間で見ても最少だった。
震災で直接・間接的な影響があって来れない、SUMMER SONICと日程が重なった、昨年の泥まみれで懲りた人が来なかった、出演者がいまいちでショボい、
盆直撃で飛行機が高い、などなど、大小いろんな理由が考えられるが、いちばん大きいのは、昨年から始まった、同じ北海道、
岩見沢で7月に開催される野外イベント「JOIN ALIVE」の存在ではないだろうか。夏に北海道で二つ、大きな音楽イベントがあって、
よほどの人でなければ両方行くとはならないだろう。どちらかに行くとなれば、とくに北海道の人間は「有名な人」が出るほうに行く。
自分が北海道人なのでそれはよくわかる。今年のJOIN ALIVEの出演者を見てみたら、有名どころだけでスガシカオにユニコーンにYUI、真心ブラザーズ、
EGO-WRAPPIN'、マキシマム ザ ホルモン、鬼束ちひろ、HY、そしてPerfumeだ。よくこれだけ揃えられたなと思うくらい、北海道のイベントにしては豪華だ。
■今回のRSRのタイムテーブルを見ると、正直「スカスカ」という感が否めない。出演者の数だけ見ると100くらいはあるのだけど、
ステージごとに振り分けるとかなり間隔があいていて、せっかくあるステージなのに音が出てない時間帯の割合がかなり多くて、
いままではアドバンテージだと思っていた「会場の広さ」で生きるステージの豊富さを、今では持て余しているようにさえ思える。
今年一日目に出演した布袋は「(RSRは)過去に出演した誰もがとてもいいフェスだと言ってました」「いつか出たいな、お呼びがかからないかな、とずっと待っていました」
と、嬉しいことを言ってくれたし、山下達郎も最近のインタビュー記事の中でも「とてもよかった」「出演を決めるにあたって周囲の人がみんなライジングがいいよ、と言っていた」
という話をしている。とてもありがたいし嬉しいことではあるが「出演者に評判が良い=客にも評判が良い」とは限らないのがむつかしいところで、
実際今年は一気に減ってるということは魅力が足りないということだろう。だからといって毎年すごいミュージシャンやバンドを呼べるかというと、それは厳しい。
過去に出演した山下達郎、矢沢永吉、チャゲ&飛鳥、椎名林檎、ミスターチルドレン、井上陽水あたりと同等かそれを超えるインパクトのある者といったら、
桑田か氷室かB'zかX-JAPANとか、そのあたりだろうか。だからといってこのあたりを呼んでほしいとも思わないし(桑田、氷室は見てみたいが)、
よそと張り合ってもしかたがない。だからといって独自性追求といっても客が来ないと、利益を出さないと続けていけない。むつかしい。
■それとはまた別に、今年びっくりしたのは、夜が明けて会場内を歩いたときに、ゴミがすごかったのだ。ちょっとショックを受けるくらいの惨状で、
こんなに会場内が汚なかったのはいままでで初めて。そしてライブ中や歩きながらの喫煙、ライブ中のステージ撮影がさらにパワーアップしていてもうどうしようもないほどだった。
これじゃあんまりだと言いたくなる有りさま。さらに今年は、飲食店スタッフと見られるリストバンドをした者達のマナーの悪さもいつもより目についた。
以前はこんなことなかったのになあ、などと言うと、おっさんの昔語りうぜえ、とか言われるんだろうな。
No.1622 2011-08-12
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2011 in EZO 1日目。
■ホテルをゆっくりチェックアウトして旭川駅から特急スーパーカムイで札幌駅。晴れ。
札幌駅の地下街と大通の地下街がつながったというんで、そこを初めて歩いてみた。まだ真新しい。日差しの強い日は地下を歩くと楽だ。
大通のマツモトキヨシで日焼け止めを買い、ホテルに荷物を預け、大戸屋で昼食。北海道まで来て大戸屋かよ、と思うむきもあるだろうが、
旅行中は食事が乱れがちになるので、定食を食べれるのはありがたいんである。もともと北海道の人間だから、せっかく北海道来たからなにかおいしいものを、
という気持ちもそんなにない。
■地下鉄で麻生まで。例年になくバス乗り場へ向かう人の数が少ない。ある程度予想はしていたが、これほどとは思ってなかったのでちょっと心配になる。
待機中のバスにはそれなりに人が乗っていた。14時10分に発車。シャトルバスは新琴似から花川へ抜け、樽川に入る。35分ほどで石狩湾新港の会場に到着。
■10回目。
このRISING SUN ROCK FESTIVAL in EZOに参加するのもこれで10回目となった。二桁である。
そしてこういう年に、またこの場所に来ることができた喜びをじんわりと感じる。
バスを降りて入場ゲートへ。昨年は開催日前日までの豪雨のため泥だらけだったが、今年は天候にも恵まれ、雨の心配はほぼ無さそうだ。
そのかわり、乾いた土地から舞い上がる砂埃がなかなかすごい。行き交う者達はタオルで口を押さえている。中にはマスクを着用している者もいた。
会場のようすをぐるっと回りながら徐々に奥へ。EARTH TENT、CRYSTAL PALACE、グッズ売り場。
バッジのガチャガチャのところでは既に大勢の交換会が始まっていた。FM局の特設ブース、ローソン、飲食店。読売新聞が毎年作成し、
会場内で配布する「Yomiuri RISING EXPRESS」をもらったり、サッポロビールのコーナーで、へんてこな紙製のとんがり帽子が入ったナイロンバッグをもらったりしながらSUN STAGEの前を通る。
SUN STAGEで2011年の先陣を切るのは「髭」というバンドで、歩きながら聞いてたがすかっと明るい、晴れた空によく合う楽しげなバンドサウンドだった。
祭太郎の太鼓、橋を抜けてRED STAR FIELD。その先がGREEN OASISで、さらにその奥にMOON CIRCUS。そこのそばに友人達がテントを設えているので、
荷物を置かせてもらう。飲み物やドーナツなどを振るまってもらい、しばらく話をして、それぞれ目当てのステージへ。
■16:00 Predawn at BOHEMIAN GARDEN
ギター一本弾き語り。まったく予備知識なしでのライブ。後日ネット上のどこかで「日本のノラ・ジョーンズ」などと紹介している文を目にしたが、
ノラジョーンズというよりはリサ・ローブという印象。逸材。なにより声がいい。ギターもかなりの腕前だ。一見、おどおどしているように見えて頼りない感じがするが、
あれで案外度胸があるというか、肝がすわっている。既にフジロック等にも出演していたというのも後から知った。ことによると今回一番の発見かもしれぬ。
来るときにのった飛行機がポケモンジェットだった、とか、アーティストTシャツを着てるとスタッフと間違えられるとか、
昼間から暗い歌ばっかりですいません、とか、焼きイカのにおいがするとか、そういったちょっと心配になる感じのMCも味があってよかった。
■17:00 B.B.クィーンズ at SUN STAGE
ぶらぶらしてたらちょうど始まったので、ぼんやり遠目に見ていたら、いきなり一曲目が「踊るポンポコリン」だったのでびっくりした。
イーグルスが一曲目にホテルカリフォルニアをやるようなもので、このあとどうなるんだろうと余計な心配をしてしまった。
それにしても、誰もが知ってる曲というのは本当にすごい。みんな立ち上がって一緒に歌って踊っている。
次が「ギンギラパラダイス」。そして「想い出の九十九里浜」。出し惜しみしないのは大人だ。
このRSRの第一回目が1999年。そのころ二十歳くらいだった連中がいま30代の真ん中から後半くらいか。
おそらくその年代の客がいちばん多いのではないかと思う。もっともCDが売れていた時代を若者として過ごしたのは幸福だったのかどうなのかわからないが、
共通して知ってる曲がたくさんたくさんあるというのは今の若い世代には理解し難いことかもしれない。で、周りにいた自分と同年代くらいの者達、
みんなギンギラ〜とか九十九里浜とか、このあたりの曲を歌えるのだ。歌詞もしっかり覚えている。すごいもんだなと思った。自分もけっこう覚えていた。3曲聞いて移動。
■17:30 SPECIAL OTHERS at RED STAR FIELD
これってライブ盤だったんだ、と思うCDがたまにある。フィッシュマンズや山下達郎のライブ盤などが自分にとってはそうであった。
で、SPECIAL OTHERSのライブがまさにそれ。完成度の高い演奏が最初から最後まで続いた。数度あった機会を逃し、ようやく彼らのライブを見ることができて、まず思ったのはそのことだった。
そして、誰もが思わず踊りだしてしまう極上の音楽。そして変拍子を繰り返すむつかしい楽曲をいとも簡単に、バンドメンバー全員まったく乱れずにやってのける技量。
ROVOの曲だとだいたい、曲の一番最後に向けてがんがんアッパーになっていってみんなぶっ飛ぶんだけど、SPECIAL OTHERSはそれとはちょっと違ってて、
一曲の中で波が引いて打ち寄せるように、がーっとあがっていって、ちょっと落ち着いて、またがーっといって、それの繰り返しで気づくとみんなわけのわかんようなテンションになってる。
うまく説明できないし「あがって」とか変な言葉使ってるけど、とにかくそういう感じ。「Wait for the Sun」なんていい選曲だし、夕暮れ時の「AIMS」から「Laurentech」への流れなんかは本当に感動した。
率直に言って、彼らはSUN STAGEでもいける。というか、こういう音楽をいちばんでかいステージでやってほしい。日も傾いてきていい空の色。
■19:00 くるり at SUN STAGE
なんだか泣ける。
新旧の曲を織り交ぜたセットリスト。岸田の歌がいい。調子が万全でないのか、高い音は若干苦しそうなようすだったが、なんだか泣けるのだ。
デビューから早10数年。自分とは同年代でもあり、一緒に年をとってきた勝手に思ってるバンドのひとつで、
一曲一曲、このころはこうだった、あのころはああだった、と思い出せる。そして彼らがもうすでに、会場のいちばんでかいステージでライブをやることに誰も疑問も不満も抱かない、
大きなバンドにまでなったということに対して、今更ながら感慨深いものがある。「ばらの花」のイントロのワンコードのシンプルなあのフレーズは、少し大げさかもしれないが、
日本のロックの歴史に残るのではないかなあと思う。そしてこの曲を聞いて、先ごろ亡くなったレイハラカミを思い出す。「飴色の部屋」もよかった。「リバー」は意外だったが、これもよかった。
バンドメンバーがいつのまにかまた変わっていたようで、ドラムの人は、昔いた森というドラマーに見た目が似てて、一瞬、あれ?また戻ってきたのか、と思った。
田中という人だった。ギターには新しく吉田という人が加わった。コーラスのうまいギタリストだった。途中、数曲、ペダルスティールギターで高田漣が参加。
くるりが終わってから一度テントへ。MOON CIRCUSでやってるサイプレス上野とロベルト吉野という人達のライブを遠くに聞きながらテントの前のイスに座ってぼうぜんと過ごす。
■21:00 布袋寅泰 at SUN STAGE
正直に言ってしまうと、最初彼の出演が発表になったとき「布袋(笑)」という気持ちが無くはなかったんである。
いやはやおそれいったのだ。
ヒットメドレー+過去のバンドの曲という、見てるほうは最高に楽しいがやってるほうとしてはどうなんだろう、と思わずにはいられない、
そんな一片の出し惜しみもない、サービス精神あふれるライブだった。たしかにまあ、せっかくの祭りなんだから出し惜しみすんな、と思う。
2008年に出演して、新曲ばっかりやって一見さんを見事にぽかんとさせたミスターチルドレンの悪口はやめろ。
それはそれとして、有名な曲でやらなかったのは「サレンダー」とか「ポイズン」くらいで、一曲目にやったキルビルのテーマのインストはやけにかっこういいし、
「スリル」「バンビーナ」「ロシアンルーレット」とたたみかける流れは圧巻といっていいほどだった。「スリル」のイントロのときに、周りにいた人達みんなちょっと笑ってた。
それにしても、小学生のころ聞いていた「BAD FEELING」が目の前で演奏されているっていうのはなんだか不思議だ。
北海道の田舎の子供だった自分には、好きな音楽のライブに行く、という発想はまったくなかった。考えたことすらなかった。
音楽はラジオやカセットテープから聞こえてくるもの、と思っていた。そんなことを思い出した。やけに存在感のあるドラムは中村達也。
■22:00 神聖かまってちゃん at GREEN OASIS
彼らのような存在を「時代の寵児」というのだろう。
名前はいろんなところで見かけていたが、Youtubeでちらっと聞いたくらいの知識しかなかった。すごくいいバンドじゃないか。
どこまで本気でどこまで演じているのかわからない、めんどうくさい感じの、一癖あるメンバーばかりのバンドに見える。
友達とふざけて遊んでいる延長上みたいな振る舞いだが、ステージ上でそんなふうにできるっていうのは実はすごい。
オケに頼り過ぎている感はあるが、表現したい音楽の志が高いところにあるというのはよくわかる。後から知ったが、彼らは千葉県出身だそうだ。
で、ベースの人はなぜか「ちばぎん」と呼ばれている。
私見の極論を言わせてもらえば、ここ数年、日本のポピュラーミュージックは相対性理論とサカナクションを中心に回ってきた。
そこにもうひとつの核となるだけのポテンシャルを持ったバンドがこの神聖かまってちゃんだと思う。
今後さまざまなプレッシャーがあるだろう。それを押し返せるだけの力があるかどうか。期待は大きい。
■23:30 斉藤和義 at RED STAR FIELD
夜空にはまぶしいほどのまんまるの月。RED STAR FIELDにはものすごい数の人間が集まっていた。よく考えたら、
もうすぐ日付が変わる時間、こんなに大勢の人が一堂に会している光景を見るというのは年明けの初詣のときくらいだ。
こちらもドラムは中村達也。骨太でタイトなロックンロール。やはり今年はあの曲だろう。
あれやるのかな、やるかな、あれ、やらないな、あ、やっぱりやった!という、集まったみんなの気持ちが目に見えるかのような空気感だった。
まず「ずっと好きだった」の通常版を歌い上げ、イントロに戻る。そして「ずっと嘘だった」。主義主張や思想は別にしても、かっこうよかった。
「猿の惑星」という曲は初めて聞いたが、歌詞がシニカルでとてもよかった。「幸福な朝食 退屈な夕食」も最高だった。
ライブ中、夜空を見上げると上から下へ流星が一筋。
■24:50 稲川淳二 at BOHEMIAN GARDEN
これまでも何度か、このRSRに出演しているのですっかりおなじみになっているが、今回初めて怪談を聞きにいってみた。
既に大勢の人達が集まっている。BOHEMIAN GARDENは、ライブのときもだいたいみんなべたっと地べたに座って聞いてる。
このときもそうだったが、時間も時間なので、横になってしまってる者も多い。今回怪談を聞いてみようと思ったのは、去年、
爆笑問題のラジオにゲストで出たとき、稲川氏の話がとてもおもしろかったので、興味を持ったんである。白い装束でステージ上に現れた彼は、
にこにこ手を振って声援に応えていた。その素振りだけで、なんかいい人なんだろうなと感じる。怪談は全部で5話。
べつにそんなに怖いということはないのだ。オチが雑だったり、よくわかないところもあった。でもやはりこれで全国ツアーやったりDVDやボックスCDセットを出したりしているだけあって、
話がうまい。これは怪談という形をつかって彼の話術を楽しむライブなのだった。で、話もおもしろかったのだけど、
話のオチでドーンというSEが響き渡るのだけど、うとうと座ったまま寝てる者がその音でびくっと目を覚ます様子がまたおもしろかった。
■これで一日目は終了。ここ数年、夜中も気温がそれほど下がらなかったが、この夜はけっこう冷えていた。友人達と別れて会場を後にする。
例年、今年もそうだが、麻生行きのシャトルバスはだいたい23:00頃に終わってしまう。で、一日目の最後までいると、キャンプせずに札幌市内に戻るにはふつう、
自家用車かタクシーしかなかったのだけど、今年は初めて、一日目の全公演終了後、札幌市内行きのミッドナイトバスというのが、新しい試みとして運行された。
シャトルバスよりも少し高い料金だが、深夜も深夜なので、その点は納得できるしありがたい。結構な人数が利用したようで、バスが何台も連なって待機していた。
みな疲れているので車内はシーンとしている。昼間よりはかなり道路が空いている。大通に到着。このバスに合わせて大通にホテルをとった。
土地勘のあるひとならいいが、遠くからわざわざこのRSRに来て、深夜の大通公園そばでぽんと下ろされて、戸惑ってた者もいたのではないか。
うっかり間違えて夜のすすきのに消えていった者もいたのかもしれぬ。ホテルについてやれやれと寝仕度。ホテル自体は大きくないが、広くてなかなかいい部屋だった。
さて寝るかと部屋の明かりを消したら、空が既にうっすら明るくなっていた。
No.1621 2011-08-11
美瑛の風景。
■朝。晴れ。前日とくらべて湿度がずっと低く、北海道の夏っていったらこれだよ、という気持ちのいい空気。涼しいっていうのはこんなにも体が楽なんだと強く感じる。
旭川駅から二日続けて富良野線に乗車。美馬牛駅まで。行ったり来たりするくらいなら美馬牛とか美瑛に宿をとればいいのだろうけど、
あんまりあのあたりに、いいと思える宿がないのだ。ユースホステルとかペンションは正直好きではない。なんだかんだ言ってホテルがいちばん気が楽だ。
富良野あたりだとまた事情が違って、それなりにいいホテルもあるようだが、富良野にはまったく興味がないのであまり気がすすまない。
それはまあいいとして、どっちにしても「ふらの・びえいフリーきっぷ」があるので、何度行ったり来たりしても余分なお金がかからないから、
列車に乗るのが苦でなければ旭川に泊まるのが無難な気がする。車、バイクやレンタカー利用ならばまたいろいろ違った選択肢もあるのかもしれぬ。
■前日は美馬牛から東方向、パノラマロード方面へ行ったが、美瑛二日目は、美馬牛駅から、北西方向へ。いわゆる「パッチワークの路」と呼ばれるエリアへ行ってみた。
こちらには、観光コースにもよく組み込まれるような「なんとかの木」とか「なんとかの丘」といった、観光バスも入れる駐車場があるような名所も点在していて、
美瑛といえばこのあたりということになっている。たしかに、名所になっているようなところはいい景色だし、美しい木もある。
ただそういうところは朝から観光客がたくさん来ていて騒がしいし落ち着かない。とくに老人の集団と中国人の団体が来ているとほんとうにがっかりする。
それでもどうにか人の切れ間を粘り強く待って写真を撮ったりしてきた。どちらかというと、名もない木や畑の広がる丘を落ち着いてのんびり自分のペースで見るのがいい。
■ところで、そんな観光バスから下りて来た人達の会話をなんとうなく聞いていた。「なんだ、さっきとおんなじじゃないか」といったようなことを口にしていた。
たしかに美瑛はだいたい、ただ丘と木と畑があるだけだ。なるほどなあと思う。美瑛の景色なんてぜんぜん心に来ない人もいるよなと、はっとさせられる。
あと、美瑛の景色を大いに楽しんでいる者達の中には、さんざんあちこちに「入るな」と看板が出ているにも関わらず、なんの躊躇もなく畑の中に侵入していく者が少なからず存在する。
とても驚くし、日本人だとしたら非常にはつかしい。しかも、親が子供に、畑の真ん中に行かせてそれを写真に撮って喜んでいる。腹立たしい。
いくつかある牧場の出入口の地面には、なにか白い粉のようなものが散布されていて、一瞬雪みたいに見える。
どうやら外部から家畜の伝染病が入ってくるのを防ぐための薬品のようだ。最近は朝鮮半島から入ってくる口蹄疫が日本の畜産業に大きなダメージを与えているので、
これもしかたないことなのだろう。美瑛の人達は観光客のことをどう思っているのだろう。一部の飲食店や宿泊施設など、観光客相手の商売をしている者達以外、
とくに農業や畜産業の人達からしたら、迷惑な存在なのではないだろうか。実際、観光客の車が渋滞して、トラクターが農作業に行けなかったという話なども聞く。
■昼になって日差しが強くなってきたし、少し疲れてきたので、一度美瑛駅から列車で旭川まで戻った。
駅の近くに、旭川の有名なラーメン店があったので入ってみた。値段は高いがおいしかった。ラーメンってよく考えたら、高いし、栄養も偏ってるし、腹持ちもよくないから、
なんだか贅沢で変な食べ物だ。あと、駅前のビルの1階というロケーションにも関わらず、関東あたりの店と比べるとカウンター席も、テーブルも、
隣との間隔がずいぶん広くてゆったりしている。こんなところにも北海道らしさを感じる。ホテルに一度戻って汗を流し、洗濯などをしながら夕方近くまで一休み。
また富良野線。美馬牛のひとつ手前、美瑛駅で下車。駅の近くの空き地では子供たちが野球をやっていた。徐々に太陽が低くなり、光がやわらかくなってくる。
美瑛の市街地を抜け、メロン農園のそばを通ると、丘の斜面一面にひまわりが咲いていた。丘の上まで上がると、雲の切れ間から地上にスポットライトのように光が差しているのが見えた。
日も暮れかけてきた時間に、十勝岳連峰の端っこがほんの少しだけ顔を出してくれた。そして最後に、初めて美瑛を訪れたときに強く印象に残った「クリスマスツリーの木」のある場所まで向かった。
日が沈みかけ、地平線の近くまで雲があるが、すき間からオレンジ色の空が見える。記憶の中の木よりも実物はずいぶん大きかった。美馬牛駅に戻って富良野線で旭川へ。
■美瑛の風景は、北海道、大自然、わーい、というのとはちょっと違ってて、よく考えてみると、地形は別としても、畑も、木も、丘を貫く道も、
全て人の手によって造られたものだと気づいた。それがなによりすごい。丘での農業は素人が思っているよりもずっと大変だろうと思う。丘の斜面を歩いて上がってみただけでも、
なかなかしんどい。農機のなかった時代ならばなおさらだろう。パッチワークの丘だって、同じものを連作すると土地がやせてだめになるから、
複数の作物を順番に作ってたらたまたまその様子が美しかったということなのだろう。畑の中にぽつんと立つ大きく立派な木々も、もともとは農作業のときに木陰がほしい、だとか、
風よけのため、だとか、目印だとか、となりの畑との境界だとか、そういう目的をもって植えられたものだ。そんなふうに、美瑛の風景が、人の手によって造られたものだということに強く感銘を受けるし、
先人達の苦難や、いまなおこの土地で暮らす人達の知恵や苦労を思うと、なおさらこの風景が偉大だと思うのだ。いつか秋の空気が澄んだ時季、
丘の背後に連なる連峰や青い池を見に、再び訪れたい。だから畑に入るんじゃないこのばかども。観光客締め出されたらどうすんだこのぼけ。
■帰り、旭川行きの列車に、携帯電話のワンセグでテレビを見てるおっさんがいた。それだけならべつにどうということはないが、そいつはなぜかイヤホンの類を使わず、
音を出してアニメと野球を続けてみていたのだ。なんだあれは。みんなにも聞かせてあげようというサービス精神なのだろうか。ひと気もまばらな旭川駅に到着。
空気がひんやりしていた。
No.1620 2011-08-10
美瑛の風景。
■早朝の便で羽田から新千歳へ。本当は旭川空港行きの便を利用したかったのだが、お盆がらみの時期なので大して割引もなく、
しかも早々と満席になってしまってたので諦めた。羽田に着いたら「新千歳空港、霧のため旭川空港に着陸するか羽田に引き返す」といった内容のアナウンスがあったんで、
お、これはいいな、霧もっと濃くなれ、旭川空港行け、とか期待していた。一番端にある24番搭乗口へ。なんの問題もなくほぼ定刻どおりに新千歳に着陸。
以前関西や九州へ行くときは利用したことがあったが、今回初めて北海道行きにスカイマークを使った。地上職員も客室乗務員も、
紺の簡素なポロシャツで、豪華な制服に金をかけるくらいならあれでいいんじゃないかと思う。
■新千歳空港を利用するのはいつ以来だろう。10年近く利用してなかったかもしれぬ。最近はこの新千歳空港内にもいろんな店や温泉などができて色々変わったと聞いてたが、
そういうのを見ることもなく早足でJRの駅へ。新千歳から快速エアポートで札幌へ向かう。
途中、北広島あたりからたくさんの乗客が乗ってきた。そういえば平日である。通勤や都心への買い物等だろうか。
新札幌から乗車してきたサラリーマンは手に文庫本を持っていた。村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」だった。
札幌駅に到着し、一度改札を出てみどりの窓口で「ふらの・びえいフリーきっぷ」を購入。
盆休みでも使用可能なお徳な企画切符である。4日間有効。網走行きの特急オホーツクに乗り継ぐ。帰省と思われる家族連れが多い。
指定席のほうが混雑している。自由席はそれなりに乗客がいるが、札幌出発時点で席は3分の1くらいあいていたように思う。
■北海道は、とてもすばらしい車窓を楽しめる路線が多いが、函館本線のこの札幌〜旭川間は、北海道の中でもいちばん退屈な景色の区間だと思う。
そこそこ人口の多い江別、岩見沢、砂川、滝川、深川などの町で停車しながら約1時間半かかって旭川駅に到着し下車。特急オホーツクはこのあと数時間かかって網走まで走る。
旭川駅は大がかりな改修工事が行われたようで、建材の木の匂いが漂う清潔で近代的な駅に様変わりしていた。ただ、駅の規模のわりには、
人が少なくてがらんとしていた。富良野線の列車に乗り換え。二両編成の列車は多くもなく少なくもない数の乗客を乗せて発車。忠別川を右手に見ながら南へ。
数年ぶりに乗車した富良野線の車窓の景色は、以前と何ら変わらない印象。美瑛駅を過ぎ、旭川からおよそ45分で美馬牛駅に到着。
かなり減ったと聞いていたが、それでもちらほらと中国人観光客がいる。天気予報では雨模様ということで、どんよりした空だったがなんとか降らずにもちこたえている。
ただ、湿度が高く蒸し暑い。
■数年前に初めて美瑛を訪れたときはほんの二時間くらいの滞在時間しか取れず、いつか必ず再訪しようと思っていたので、
今回ようやくそれが叶った。この日は、美瑛のなかでもいわゆる「パノラマロード」と呼ばれるエリアを中心にめぐった。
時折雨に降られながら、少しでも空が明るくなるのを願って丘を登ったり下りたりしていた。
日本のあちこちそれなりに旅行して見て回ったが、この美瑛が、日本でいちばん美しい町だと思う。
それをなんとか、カメラで記録しようと思ってあれこれ撮影してはみたが、なかなか思ったようにあの美しい景色をとらえることができなくて、もどかしい。
天気が悪いので、十勝岳連峰も姿を見せてくれない。それでもなんとか少しでもいい景色を収めようと、あちこちさまよった。
美馬牛の市街地を離れると、店はおろか自動販売機さえなかなか見つからず、飲み物も手に入らないので夏は注意が必要だ。
そんな場所をうろうろぐるぐる駆けずりまわっていたら、ほんのちょっとの間、晴れ間が見えるときがわずかにあって、そんなときは強い光できれいな景色が撮れる。
■夕暮れの景色まで粘りたかったが、体力的にきつくなったので駅まで戻った。たまたま「ノロッコ号」という季節限定列車が来たので、
それに乗ることにした。自由席ならば「ふらの・びえいフリーきっぷ」で追加料金無しで利用可。乗客はそれほど多くない。
乗務員が記念乗車証をくれた。ノロッコ号はいわゆるトロッコ列車的なあれで、機関車が客車を引っ張ってゆっくりのろのろ走るというんでその名前になっている。
でもこれが案外速いのだ。とくに美瑛から旭川間は停車駅なしのノンストップなので、思ったより早く旭川まで戻ることができた。
まだ空はいくらか明るく、秋のような雲が出ていた。駅前のホテルにチェックイン。
■駅の裏側までぶらぶら散歩してみた。忠別川沿いでは何か大がかりな工事が進んでいる。旭川駅の周辺はもともとかなり都会的で、
特に駅北側は百貨店やホテル、オフィスビル等が建ち並ぶ、北海道の中では札幌に次ぐ大きな繁華街となっているが、
南側は大きな川が駅のすぐ近くまで迫っているという地形的な理由で、わりとのんびりとした景色になっている。それがいま、
なにか大きな工事で整備されているようで、まだまだこの町は発展するポテンシャルを持っていると感じた。
ローソンにあるロッピーで、後日行くRISING SUN ROCK FESTIVAL in EZOのチケットやバス券を購入。
ガラス張りの立派な高架駅となった旭川駅に、一両だけの列車がごとごとと入線してゆく様は、どことなくなにかちぐはぐな感じがした。
No.1619 2011-08-09
■Amazonで予約してた山下達郎の新しいアルバム「Ray of Hope」が届いた。発売日が8月10日なのに、一日早く届けてもらえて得した気分だし、
北海道行き前日にして届いたので、iPodに入れて出先で聞けるので助かった。CDを発売日に買うなんて去年の相対性理論のアルバム以来だ。
CDを予約するなんていつ以来だろう。学生の頃POLYSICSのアルバムを予約したことがあったような記憶があるから、それ以来かもしれぬ。
そもそも近頃はCDを買うことがめっきり少なくなって、かと言って配信サービスで購入してるわけでもなく、
たまーに掘り出し市とかネット通販でアナログ盤をちょっと買うだけだったので、
CDを買って初めて封を切ってケースを開けてディスクを取り出し、ブックレットを開くあの一連の行為の喜びをひさしぶりに思い出した気分だ。
■感想とかはべつにここに書くまでもないだろうが、各方面での山下達郎本人へのインタビューや菊池成孔氏をはじめとするミュージシャン達へのインタビュー記事を、
主にネット媒体で興味深く読んだ。職人でありながら自分の作品を「商業音楽」と言い切る潔さがいいなと思った。
初回盤についてくる、ライブソースを集めた「JOY 1.5」もとてもいい。あと、「Ray of Hope」も「JOY 1.5」も、安いスピーカーやヘッドホンで聞いてもわかるくらい音がとてもいい。
No.1618 2011-08-06
豊砂の海辺。東京湾に面してこんな広々した野原もある。
豊砂の猫。
■8月なのに自転車に乗って茜浜まで行った。くそ暑くなると思ってたから朝早い時間に出たが、やっぱり蒸し暑い。
去年、一昨年、三年前の津田沼ノートを読み返してみたが、8月はやはり「自転車に乗った」という記述がない。
それでも、やはり海辺というのは気分のいいもので、行けば気が晴れる。猫は一匹だけ見かけた。川を渡って霊園裏から豊砂の突堤方面へ。
釣り人の原付の下に猫が一匹。雑草の丈がずいぶん伸びていた。
No.1617 2011-08-04
■8月になった。
■月のはじめから、また訃報である。
松田直樹。
彼とは同じ年なのだ。彼は早生まれなので、学年でいうとこちらがひとつ下になる。同じ年生まれには中田英寿などがいる。
マリノスで早くからポジションを獲得し、長い間、熱いプレーを見せてくれた。敵にすると本当にやっかいな、味方だったらこんなに頼もしいやつはいない、
そう思わせるいい選手だった。ディフェンダーとしてヨーロッパのクラブでやれるのは彼くらいだと思っていた。1996年のアトランタオリンピックにも出場。
早起きして見たマイアミでのブラジル戦にも彼は出場し、強烈な相手攻撃陣を必死で食い止めていた姿をいまでもはっきりと思いだせる。かっこうよかった。
■自分がだんだん年をとってくると、知ってる人が亡くなることが多くなる。子供のころは、テレビなんかでだれだれが亡くなりました、と言ってるのを見聞きしてても、
知らない俳優とかそんなのばっかりだったが、ここ数年、知ってる人が他界することがずいぶん増えたなと感じている。
■話は変わって、めずらしくテレビの話。昨日、爆笑問題の番組に、高校時代の友人が出ていた。お笑い芸人がネタを見せる番組だった。そんな中で彼はコントをやっていた。
案外、と言っては失礼かもしれないが、おもしろかった。司会の爆笑問題の田中氏とも絡む場面があったので、なかなか良かったのではないか。
彼は高校時代から「お笑い芸人になる」と言っていた。あれからもう15年も経ったんだな。
■さらに話は変わって、けっきょく、この夏もRISING SUN ROCK FESTIVAL in EZOに行くことにした。
歴史に残る大災害のあった年、ミュージシャンたちはステージでどんなアクトをし、どんなことを話すのか、そういうことも気になるし、スカパラと上原ひろみのライブは見ないと後悔しそうな気もするし、
神聖かまってちゃんも気になるし、ほんとうにひさしぶりのPOLYSICSもちょっとでいいから見たい、とかいろいろ理由がある。
出演者が決まって、ああこれはちょっと残念な感じかな、と思っていたが実際タイムテーブルを見ながら、このライブみて、こっちのステージ行って、とか考えてみたら案外、
見たいライブがたくさんあって、ほどよく被らずに見ることができそう、過去に見逃したSPECIAL OTHERSやDachambo、稲川淳二も見れるじゃないか、と気づいたら急に行きたくなってきたのだった。
こんなときにこそ行ってやらないと、とか勝手に考えているところもある。
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「津田沼ノート」は武田がやっています。
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